
MC DSC

MC DSCは種々の熱分析装置や超高感度熱量計で測定困難なサンプルを研究するために設計されています。除去可能で再利用できる1ml アンプルは固体、スラリー、懸濁液、液体、あるいは気体サンプルの測定を可能にします。MC DSCはこれまで困難であった測定を高感度でできる多目的装置です。
MC DSCテクノロジー
MC DSCは温度調節と検出用センサーの双方にきわめて感度の高いペルチェ技術を用い、等温測定の正確な温度調節と2°C/minまでの再現可能なスキャン速度を可能にします。ペルチェセンサーは、スキャン速度にかかわらず正確なマイクロワット検出を行い、4つの脱着可能なセルを装備しています。
また1つのリファレンスと3つのサンプルを、揮発を防ぐためにOリングでシールされたハステロイアンプル内で同時に測定します。これには予備のアンプルセットがついているため、クリーニングのための時間が不要です。また口の広いアンプル設計のため、クリーニングが簡単で、多量の固体や粘稠液の測定にも適します。0リングでシールすることで、200 °C、15atmまで耐えられる信頼性の高い密封状態となります。ハステロイアンプルは、高濃度の塩基やH2SO4、HCl、およびHNO3などの腐食溶媒に対して抵抗力があり、タンパク質や脂質などの生体材料に対して不活性です。
また上蓋は、高圧下での反応、プロープの取り付けが簡単にできるように設計されています。
MC DSCアンプル
標準アンプル
MC DSC用標準ハステロイアンプルは短く、広いシリンダの形状で、容量は1.5mlです。アンプルの11mmの口径と5mmの深さにより、薬剤のタブレットやカプセルなどの固体、大きな破片、はちみつやヨーグルトなどのような粘稠液、ゲルを簡単に入れることができます。また、その広い 開口部により、アンプルのクリーニングも容易です。
高圧アンプル
高圧アンプルは、標準アンプルと同じ外径とOリングシールを備えていますが、内側の容積は標準アンプルより小さい0.5mlとなっています。アンプルは、1.6mmのハステロイチューブを通してガスボンベに接続されています。これらのアンプルは、最大6000psi(400atm)の圧力で使用でき、定圧での温度スキャンや定温での圧力変化中での熱量の測定が可能です。高圧の非反応性ガスは、発熱反応の熱量や反応速度に対する圧力の影響を測定するのに役立ちます。高圧の反応ガスを用いると、クラスレート化合物の形成条件を考察するのに役立ちます。
バッチ反応アンプル
これらのアンプルは、揮発性の液体の蒸気と固体との間の反応や、固体を液体に浸したときに起こる反応を研究するために設計されています。アンプルは、ハステロイ製で、O リングシールにより別々にシールされたコンパートメントを 2つ備えています。内側のコンパートメントの容積は 0.1ml、外側のコンパートメントの容積は1.2ml です。バッチ反応アンプルの外形寸法は、標準アンプルと同じです。バッチ反応アンプルには、O リングのシールを通して内側のコンパートメントからでているテフロン®でコーティングされたハステロイロッドがあり、これにより、熱平衡後、内側と外側のコンパートメントの間のシールを手動で開くことができます。この処理により、ロッドが押し下げられるとすぐに、反応による熱量の測定を始めることができます。吸収剤と水蒸気の等温反応、アモルファス材料の結晶化や水蒸気が触媒となって起こる結晶多形の変換などの反応、加水分解、ドライフードや薬剤と液体との反応、高湿により引き起こされた凝結反応、および潮解、また、液体へ固体を浸す際の熱の測定も可能です。
プローブ付きアンプル
プロープ付きアンプルは、標準のアンプルと同じ外形寸法で、プロープは、熱量の測定と同時に補助測定を行えるよう挿し込まれています。また、ガスの生成や吸着を測定するために圧力変換器を接続することもできます。また光ファイバーの分光器をプロープとして挿し込み、クロマトグラフィー装置や質量分析装置を接続する事も可能です。
アプリケーション
薬剤と賦形剤の配合変化
MC DSCは、サンプル容量が大きく、複数のセルから成る設計のため、短時間で薬剤と賦形剤の反応速度の温度依存性を決定することができます。図は、アスピリンとステアリン酸マグネシウムの1:1混合物155mgを連続温度スキャンした結果を示しています。データは、検出器のベースラインとサンプル熱容量に対して補正されるため、反応熱だけが示されます。非相溶性を示す吸熱反応速度は、約50 °Cで測定可能です。アンプルの口が広くて(11mm)深い(5mm)ため、タブレットおよびカプセルを丸ごと調べることができます。また、この連続温度スキャン方法は、もとの薬剤と混合物の安定性に関する等温熱量測定に有効な 温度を素早く確立するのにも有用です。

熱容量
MC DSCは、大容量でサンプルを扱えるため、従来のDSCよりもより正確な熱容量の測定が可能です。特に、少量のサンプルでは測定しにくい不均一な材料に最適です。アンプルは、口が広く(11mm)、深い(5mm)ため、分割すると特性に影響を与えてしまうため分割できないような材料の測定が可能です。下図は、連続温度スキャンで測定した綿実とサファイアロッドの熱容量を示しています。

品質保証の予測
この実験では、プログラムされた温度まで急速にスキャンされ、その後平衡に達し、定常状態の熱量を正確に測定するために、十分な時間(30~45分)等温に保ち、次のステップの温度にします。これらの測定は、特に反応するときの活性化エネルギーや反応変化の温度の測定に役立ちます。
図は、歯の漂白のために使用される3つの異なったブランドのパーオキサイド漂白剤の一定量(100mg)に対するデータです。比較のため35%のH2O2も表示しています。分解速度が速いほど、より短時間で歯を白くしますが、作用時間も短くなります。この方法は様々な材料に適用でき、例えば洗剤、薬剤と賦形剤の混合物、接着材、培養細胞、および微生物などがあります。

結晶多形と非晶質の結晶化
MC DSCのバッチ反応アンプル、速い応答、複数のサンプル測定は特に揮発性液体と固体との反応熱や反応速度の測定について有用です。例えば、図は、100%の湿度中に露出した部分非晶ラクトースのサンプル30mgを急速に結晶化したものを示しています。N2のブランクは、水の蒸発による吸熱の後に発熱したことを示しています。酸化、分解、加水分解、硬化などの反応の発熱や反応速度を標準22アンプルの中で等温測定が可能です。ガスの発生や溶液組成の変化の後、プローブへアクセスが可能なアンプルに、圧力変換器、スペクトルプローブや質量分光器の注入口を取り付けることが可能です。

代謝速度の温度依存性
多くの生命体の中では、新陳代謝の熱生成速度は酸素取り込み速度と同等ですが、培養細胞、組織や微生物内の熱量の測定は酸素取り込み速度より容易に行なう事ができます。温度を連続関数とした呼吸速度のデータは、培養細胞、生命体や生態系への気温変化の影響の予測、生産性向上のための作物プラントの栽培品種の選択、外来種の侵入の予測に有効です。図は、りんごやオレンジの木の葉の組織およびトマト培養細胞のサンプルそれぞれ50mgに対し連続温度スキャンを行った新陳代謝の熱量を比較したものを示しています。温度による新陳代謝の熱量とCO2排出量の同時測定は、ステップスキャン法により可能です。

製薬処理
様々な物質の熱発生や反応速度の測定を行うことは、処理中に起こりうる相転移や分離を防止するために有用です。MC DSCは、固体、液体、スラリー、およびサスペンションの温度、エンタルピー変化、熱容量変化、相転移や分離の速度を測定するのに最適です。これによって処理中に相転移が起こったかどうか判断することができます。図はブドウ糖水和物150mgの連続温度スキャンを示しています。
ブドウ糖水和物は、約50°Cでガラス相転移、約80°Cで溶解、110°C以上で水和物分解、さらにシールしたアンプル内のN2の下で160°C以上で分解します。MC DSCは材料内の小さな変化も高感度で測定する事ができます。

食品加工
反応速度の温度依存の定量を行うことは、食物、薬剤、クリーナー、工業化学薬品、および工業製品において、適切な保存、製造、および調剤条件を確立する際に必要です。
MC DSCを使用すれば、温度による様々な材料の反応速度を測定できます。連続スキャンは、特に、最適温度を調べるのに有用ですが、等温熱量測定と解析法による反応と反応速度の解析には長い時間が必要です。図は、一定量(0.5g)の濃縮パイナップルジュースを様々な条件下で連続温度スキャンして得たデータを示しています。ジュース中のショ糖の加水分解は、還元糖であるブドウ糖を生成しますが、その後、還元糖は酸素によって酸化され、異臭と変色を発生するジュース中のアミンとのメイラード反応を生じます。このようにプロセスの条件を最適化するために有用です。

食品中の相転位
食品の調理、冷凍、乾燥、混合、および保存時に起こる相転移は、外見、味、および品質を評価するために重要です。
MC DSCの大きく口の広いアンプル、温度範囲、高圧機能、および複数のサンプル容器は、食品の温度スキャンと等温測定に最適です。図は、様々な処理の後の米粒の温度スキャンの結果を示しています。ピークは、調理後に残っている結晶質のでんぷんの糊化が原因です。


